活動報告

令和3年9月 高松市立みんなの病院は開院3周年を迎えます

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 当院は、北は多島美を誇る海の国立公園瀬戸内海に面し、南は讃岐山脈を臨む風光明媚で温暖な、人口約42万人を擁する香川県の県庁所在地である、高松市にあります。
 施設の老朽化や公立病院改革ガイドラインが示されたことなどを踏まえ、高松市民病院と香川病院を移転統合した新しい病院を整備し、塩江病院をその附属医療施設とすることとした「高松市新病院基本構想」が平成21年3月に策定されました。そして、この基本構想の策定から約9年の年月を経て、平成30年9月1日、約8km南方の仏生山町に開院致しました。また統合を機に、一般公募により「高松市立みんなの病院」と名称も変更致しました。

エントランスホール

「エントランスホール」

 新病院は、約54,100m²の広大な敷地(旧病院の約 2.5 倍)に、地上6階建、鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造(一部鉄骨)延床面積約27,300m²で建築されており、病院本体及びエネルギー棟は震度6強まで対応可能な免震構造を採用しています。
 来院された方が最初に目にするエントランスホールは、2階までの吹き抜けの構造にすることで、窓からの柔らかい光をふんだんに取り込めるよう工夫しています。

「ブロック受付」

「ブロック受付」

 外来患者さんがより受診しやすい環境を整えるため、関連する診療科ごとにまとめたブロック単位での受付を採用するとともに、診察室や検査室を2階に集約するなど、患者さんの動線を単純化することで、負担軽減を図っています。

東側「藍色」西側「茜色」「個室」「4 床室」

 病床数は、地域包括ケア病床を含む一般病床299床、感染症病床6床の305床を確保しています。病棟は、東側は、患者さんに安心感を与える藍色(写真左上)、西側は活力(生きる力)を与える茜色(写真右上)をイメージカラーとしております。一人当たりのスペースを8m²以上確保した4床室(写真右下)と、トイレやシャワー付きトイレを設置した部屋など、多様なパターンの個室(写真左下)を整備しています。それぞれの部屋にゆとりある空間を設けるとともに、ベッドから外の景色を楽しめるよう、窓の下枠を低く設定しています。
 なお、良好な療養環境や患者さんのプライバシーを確保するため、全病室の半数近くを個室としています。

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 新病院では、急性期医療及び高度で専門的な医療を提供できる本市の中核病院として、「がん医療」、「救急医療」、「災害時や感染症に対する医療」及び地域と密着し、地域医療機関と連携の下「地域包括ケア等の後方支援機能の強化」に重点的に取り組むこととしています。
 
 「がん医療」では、県内4台目となる検査装置「PET-CT」をはじめ、高エネルギーの放射線を照射してがん細胞を破壊する治療装置「リニアック」を導入しました。これにより、病巣の早期発見、転移や再発に対して効果的な治療を行うことができます。また、通院治療室(外来化学療法室)にベッド2台とリクライニングチェア6台を配置し、外科手術・放射線治療・化学療法等、集学的治療の充実に努めることとしています。さらに、6階の地域包括ケア病棟の中に、緩和ケア病床を4床整備し、適切な緩和ケアを提供することが可能となりました。

「手術支援ロボット」

「手術支援ロボット」

 また、令和3年5月から手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ Xi サージカルシステム」の運用を開始しました。開腹手術・腹腔鏡手術と比較しても、低侵襲な手術が可能となり、泌尿器科にて、認定資格を取得した3名の医師が執刀し、地域の皆様に、より安全で質の高い治療を提供できる体制を整えました。
 また、泌尿器疾患は高齢者に多く、合併症の存在も危惧されますので、他科とも協力しながら一人一人の患者さんに合わせた細やかな治療を心がけています。

「救急外来」

「救急外来」

 「救急医療」では、二次救急医療機関として、三次医療施設や救急隊との円滑な連携を図るとともに、新たに救急科を開設し、全診療科の医師、スタッフの連携のもと、最善の医療を提供できる体制を整えました。1階の救急外来には、時間外に来院した患者さんの診察室3室、感染症診察室1室、簡易手術室1室、観察ベッド5台を整備しました。さらに、画像診断部門に最短でアプローチできる設計としています。また、3階に救急病棟15床を整備し、救急患者の入院が容易となりました。救急エリアのイメージカラーは、威圧感がなく、ぬくもりが感じられる「えんじ色」としております。
 なお、救急病棟15床のうち4床は精神疾患を持った身体合併症の患者さんにも対応可能です。

「地域医療・患者支援センター」

「地域医療・患者支援センター」

 「地域包括ケア等の後方支援機能の強化」では、地域包括ケアシステムの構築に向けて、急性期を脱した患者、介護施設や自宅からの緊急患者や在宅復帰支援のための「地域包括ケア病棟」は旧病院からすでに設置しており、みんなの病院でも積極的に地域包括ケアの後方支援を推進したいと考えています。また、「地域医療・患者支援センター」は、患者さんの入退院や在宅医療の支援、更には転院や医療福祉に関する相談などを、看護師、薬剤師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーら各分野の専門職が一元化して対応し、患者さんの容態や事情に合わせ、的確なサポートを行います。

「左上:ヘリポート」「左下:免震装置」「多目的ホール」

「左上:ヘリポート」「左下:免震装置」「多目的ホール」

 「災害時や感染症に対する医療」においては、近い将来発生すると予測されている南海トラフ巨大地震などにも対応できる、震度6強まで耐えられる免震装置(写真左下)を採用するとともに、併設のエネルギー棟に非常用発電機を設置し、停電時に72時間分の電力が供給できる体制を整えています。また、屋上には21m四方のヘリポート(写真左上)を整備し、ヘリからフラットにエレベーターホールまで移動でき、3階の手術室までスムーズに搬送できる動線を確保しています。更には、多数の被災者を収容できるスペースを1階の多目的ホール(写真右)や廊下に確保したことで、災害時の対応が可能となっています。また広域災害時にも、本院のDMATを、いつでも派遣できるよう、準備を整えています。感染症対策につきましては、第二種感染症指定医療機関として、感染症患者に対する医療の充実を図るため、救急外来に感染症診察室、4階には感染症病床を6床整備しています。今回の新型コロナウイルス感染症に、感染発生時から対応しております。また、4階西病棟は扉で仕切ることにより、病棟全体を陰圧にすることができ、病棟の一部を新型コロナウイルス感染症専用病床に転換運用しています。

「院内保育所」

「院内保育所」

 新病院の開院に合わせ、病院に勤務する職員の子育て支援及び福利厚生の充実により、職場環境の向上を図り、医師及び看護師等の確保と定着を目的とした、院内保育所を開所しました。院内保育所は同一敷地内に、木造平屋建て延床面積約300m²で建築しており、無垢材をふんだんに使用した木のぬくもりを感じられる造りとしており、30名まで入所可能な施設を整備しています。

今後の展望

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 本市の中心である北部地域には、旧高松市民病院を含め、300床以上の総合病院が3つありましたが、新病院を整備した南部地域には、同規模の総合病院はありませんでした。今後、当院は本市南部地域の拠点病院として、その重責を担い良質な医療の提供を行っていきます。
 そのためには、急性期病院としての役割を果たしながら、地域包括ケアシステムの一翼を担う病院として、地域医療機関との連携の強化が益々重要になると考えています。今回、注力するがん医療、救急医療に加え、従来からの小児・周産期医療、精神科医療、人間ドックや疾病予防、へき地医療など、さらに歯科口腔外科の新設により、市民の皆さんがいつでも安心して暮らせるように、本市医療全体の最適化に取り組んでまいります。
 また、人材育成にも積極的に取り組み、研修医の先生を多く受け入れ、十分研修出来るような魅力ある臨床研修病院を目指したいと考えています。何よりも若い先生を迎えると、病院が活気づきますし、次世代を担う医師を育成することは、我々の責務であると思っています。そのためには、地域の医療機関の先生方にもご協力頂き、しっかりした臨床研修プログラムを作成し、研修体制を充実させたいと考えております。
 最後になりましたが、高松市立みんなの病院という名称は、「多くの方々に信頼され、親しまれ、市民の皆さまとともに歩んでいく病院でありますように」との願いを込め、たくさんの公募の中から決定したものであり、我々、職員一同は、文字通り「みんなの病院」となるよう努めてまいります。

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