活動報告

令和5年5月 鹿児島県立薩南病院が移転オープンしました

鹿児島県立薩南病院

map

鹿児島県立薩南病院は、薩摩半島の南西部に位置する南さつま市に立地しており、隣接する南九州市、枕崎市を含む診療圏人口は、82,657人(R4.10.1推計)となっています。
鹿児島県内においても、過疎・高齢化や人口減少が進む地域にあって、地域における中核的医療機関として急性期を中心とした医療を提供するとともに、救急告示病院、地域災害拠点病院、へき地医療拠点病院、地域がん診療病院、地域医療支援病院などの指定を受ける等、多岐にわたる役割を担っています。

旧薩南病院は、元々は結核療養所として開設した経緯もあり、市街地から離れた場所に立地しており交通の便が悪く、また施設の老朽化が進んでいました。さらに、地域の産科診療所の閉鎖が見込まれる中で、地元自治体から薩南病院への産婦人科の新設が強く要請されていたこと等もあり、「県立薩南病院あり方検討委員会」(平成26~27年度)での協議を経て、移転建て替えを前提とした方針を確認していたところです。

そんな中、産婦人科医師の確保の目途がたったことから、令和元年度から具体的な検討を開始し、基本構想を策定する中で、移転場所を南さつま市の市街地(県有地)に定め、その後、基本計画、基本設計、実施設計を経て、令和3年度より病院建設に着手しました。
新型コロナウイルス感染症の流行やロシアによるウクライナ侵攻などの影響もあり、当初の予定よりも、スケジュールが遅れるとともに、事業費も高騰する等、様々な困難に見舞われましたが、令和5年4月に建物が竣工し、5月の連休明け(5月8日)より、新病院において外来診療を開始しました。

施設の概要

新しい薩南病院の延床面積は約15,000㎡で、旧病院より1.3倍広くなりました。
構造としては地上6階建ての鉄骨造りで、地震の揺れに強い免震構造を採用するとともに、屋上にはヘリポートを設置しています。
浸水被害に備えて、病院の敷地を近接する河川堤防の高さまで嵩上げするとともに、電気、ガスなどのエネルギー関連の設備や非常用の備蓄倉庫を6階部分に集約しました。
またBEMSシステムを導入してエネルギー消費量の適正管理・効率化運転を目指すとともに、LED照明、太陽光発電設備を採用するなど省エネルギー化や省コスト化を図っています。

所在地 鹿児島県南さつま市加世田村原4丁目11番
面積 敷地面積:19,554㎡ 、建物延床面積:14,976㎡
病床数 160床(一般146床、感染 4床、結核10床)※当面、150床で運用
診療科 内科、循環器内科、消化器内科、人工透析内科、外科、消化器外科、放射線科、産婦人科、小児科、麻酔科

sastunan02

1階のエントランスホールは2階まで吹き抜けで、外光を多く採り入れるとともに、「吹上浜」をイメージした塗壁や県産材を使用した木ルーバーの天井等により、訪問者に開放感と心地よさを感じてもらえるよう配慮しています。
エントランスに続く動線上には、外来患者の利便性等を最優先として、外来診察・検査機能(外来診療部門、検査・処置部門、放射線検査部門)を集約しています。また、消化器及び循環器に関しては、検査から診察・処置まで一体的に運用できるよう、各施設・設備の充実とともに、センター機能の強化を図っています。

エントランスホール

エントランスホール

外来待合・外来受付

2階には医局や事務室、会議室などの管理部門を集約するとともに、手術室やリハビリ室、旧病院より拡充した透析センターを配置しています。また、1階屋根部分に屋上リハビリスペースを設け、屋外での安全な歩行訓練が可能なスペースを確保しています。

左上:手術室、右上:医局、左下:透析センター、右下:屋外リハビリスペース

3階から5階にかけては、それぞれの診療科の混合病棟となっています。各階とも入院患者に目が行き届くよう、スタッフステーションを病棟の中央に配置し、それを取り囲むように病室を設けています。
病室については、温かみのある木目調と清潔感のある白色を基調とした落ち着きのある内装としています。また、従来よりも個室を多く設けるとともに、多床室においてもできるだけプライベート空間を確保できるよう配慮しており、2床室においては、国内で初めて「Z型病室」を採用しました。

病棟廊下、スタッフステーション
上:病棟デイルーム、左下:個室、右下:Z型2床室

新設した産婦人科の病室は3階に配置し、緊急の場合はすぐに階下の手術室に運べるよう配慮しています。
4階には感染症病床(4床)、5階には結核病床(10床)を確保するとともに、それぞれの病床に隣接して陰圧への切り替えが可能な病室を3室ずつ設置しました。

LDR、新生児室

1階の正面入口とは別に、救急や感染症などの対応窓口を設け、感染症患者についても、一般の患者と接触することなく、感染症病床や結核病床に移動できるよう、独立した動線を確保しました。
屋外には患者・職員用合わせて351台分の駐車場を確保するとともに、路線バスや地元自治体のコミュニティバスの路線も誘致しました。

また職員の子育て支援や福利厚生の充実を目指し、これまではなかった院内保育所を開設し、4人の保育士等を中心に、日中の保育に努めているところです。

院内保育所

院内保育所

医療機器

さらに地域にあって高度・専門医療を実現するための各種医療機器についても、旧病院から多くを引き継ぐとともに、新病院移転に合わせて、医療機器の更新や新規導入を行ったところです。
CTの更新を始め、血管造影撮影装置(アンギオ)を1台増設、新病院においてMRIを初めて導入しました。また、引き続き放射線治療装置(リニアック)を備えており、当地におけるがん治療での活用を図ってまいります。

左上:CT、右上:アンギオ、左下:MRI、右下:リニアック

今後の展望

移転建て替えに伴い、施設・設備の面では、従来よりも充実度が増大したところですが、医師や助産師・看護師をはじめとしたスタッフの確保については、依然として、苦労しているというのが実感です。
7月には新病院における第一子誕生も見ました。産婦人科や小児科など、新設・再開された診療科も徐々に認知され、妊婦や患者も増えつつあります。また、より利便性の高い場所へ移転した効果もあってか、従来からある診療科においても患者が増えつつあります。

新病院での診療は緒に就いたばかりであり、ハード面だけでなく、ソフト面での試行錯誤も続く中ですが、南薩地域における地域医療の最後の砦として、病院の理念である「中核的病院として地域医療に貢献し、住民に信頼され、安心して医療を受けられる病院」を目指し、職員一丸となって取り組んでまいります。

上空から見た薩南病院

このページの一番上へ